「話したって、どうせ伝わらない」
心のどこかで、そう決めつけていた。
口元の動きがうまくいかず、言葉も伝わりづらい。
そんな自分が何かを話そうとすること自体が、怖かった。
目次
言葉が出てこない
顔の麻痺は、見た目だけでなく、会話にも影響した。
相手が聞き返してくるたびに、申し訳なさと恥ずかしさが押し寄せる。
「あ、ごめん…ちょっとわかりづらいね」
そう言われるたび、少しずつ心が閉じていった。
伝えることを諦めかけていた
どうせ、言っても伝わらない。
どうせ、わかってもらえない。
だから、言わない方が楽。
そう自分に言い聞かせながら、本当はずっと──誰かにわかってほしかった。
それでも話してみた
ある日、ふとした会話の中で、ついに私は話してしまった。
「実は、顔が麻痺してて…しゃべりにくいんだ」
言った瞬間、心臓がバクバクしていた。
相手の反応が怖かった。
期待通りじゃなかったけど
返ってきた言葉は、思っていたほど温かいものではなかった。
むしろ、少し戸惑わせてしまったかもしれない。
でも、私は話せた。
それだけで、涙がこぼれた。
涙の意味
その涙は、悲しみでも怒りでもない。
ずっと胸の奥に押し込めていた気持ちが、ようやく外に出たこと。
私自身が、私を少しだけ許せた瞬間だったのかもしれない。
「伝えたい」は、ちゃんとある
言葉にできなくても、伝わらなくても。
それでも「伝えたい」と思う気持ちは、ちゃんと生きてる。
私はこれからも、少しずつでも話していきたい。
誰かに届かなくても、自分のために。
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